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ロンドン アフリカの未来心配

2020年08月16日

 新型コロナウイルスの流行が始まって以降、何度か訪れたアフリカが気にかかっている。

 地方では痩せた土地を耕し、大家族が土壁の家で暮らし、地面に穴を掘った共同トイレを使用。市場はごった返し、学校は子どもであふれていた。あそこにウイルスが投入されたら。想像するだけで胸が痛む。

 都市では、ロンドンよりも厳しい封鎖で多くの失業者が出ているという。かつて取材した元子ども兵も、ようやく手に職をつけたところで、新型コロナにより収入を失ったと聞く。

 国連はアフリカでの新型コロナの死者を30万人と予測。「防ぐ術(すべ)はないのか」と尋ねると、ある専門家は言った。

 「飢餓を招く封鎖の継続は賢明ではない。大量死は免れないという事実を受け入れよ。5歳以下の500万人が毎年、肺炎やマラリアで死んでいる事実を、世界は許容してきたはずだ」

 先進国は今、自らに火の粉が降り掛かり、大量死の恐怖におびえている。だが、アフリカはずっと、その恐怖の中にいた。先進国が対岸の火事にしてきた結果、再びの大火がアフリカを襲おうとしている。来るべく未来に慄然(りつぜん)とする。 (沢田千秋)