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モスクワ 「おめでとう」に困惑

2020年08月22日

 5月9日は第二次大戦の旧ソ連の対独戦勝利を祝う日。ソ連の後継国家ロシアでは仲間うちで、ときには見知らぬ者同士でも「おめでとう」と声を掛け合う。

 モスクワの商店。日本国籍と告げても「おめでとう」と言われた。返事に窮した。日本は敗戦国だし、北方領土も占領されたし…。「ありがとう」と返すべきなのか?

 大半のロシア人はソ連の勝利を世界にとって普遍的な「善」と信じている。だから誰にでも「おめでとう」と言う。ただ素直に受け止められない外国人もいる。

 冷戦の時代、ソ連に自由を抑圧された東側陣営の国の人々はどう思うだろう。終戦後にソ連によってシベリアに抑留され、無実の罪で処刑された旧日本軍の兵士も悲しむだろう。

 昨年、留学していたモスクワの大学で、私やポーランド人の学生がロシア人の先生にそんな疑問をぶつけたら「ソ連の勝利の価値に疑いを挟むことは許しません」とばっさり。

 戦争が生む複雑な結果を「おめでとう」のひと言でまとめられるだろうか。戦後75年。日本の終戦の日を8月に控えて自問する。 (小柳悠志)

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