2020年09月06日
米国で死者10万人を超えた新型コロナウイルスの対策で罰則付き外出禁止令が出ていたワシントン近郊の自宅周辺でも、6月からようやく規制が一部緩和され、街中を歩いてみた。
緩和といっても理髪店は予約のみ、レストランは店内飲食禁止で店外の席だけ。それでも座って食事をする人の姿を見かけると「やっと街が生き返り始めたか」と気持ちが明るくなる。
一方、道路沿いの店は、ガラスを覆う大きなベニヤ板を打ち付けていた。黒人男性の暴行死事件への抗議デモが過激化し壊されるのを恐れてのことだ。レストランの人出と大きな板。そのコントラストに、米国社会の複雑さを見るような気がした。
ただ、ある商店の女性に聞くと「デモはおおむね平和的で、怖いと感じることはなかった」と話す。全米でも暴行死事件直後は放火や略奪のニュースが目立ったが、時間とともに暴力的ではない、差別解消を求めるアピールが広がっている。
世界一裕福で国力のあるはずの大国は、格差や差別など矛盾を抱え、社会の分断も指摘されている。だが、人々は少しずつ乗り越える努力をしているようにも感じられる。 (金杉貴雄)