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モスクワ 政府発表への不信感

2020年09月16日

 新型コロナウイルスの感染大国ロシア。6月中旬で外出制限も解け、モスクワで指折りの繁華街アルバート通りで知人のロシア人夫妻と食事をした。

 心なしか夫妻は老け込んだような…。まだ50代なのにコロナ疲れ? これまでの旅行ガイドの仕事もなくなり、郊外の別荘にこもっていたとのこと。

 夫妻の口からは政府への不満が出てくる。憲法改正をしている場合か、とか。都市封鎖をしたのは間違いだ、とか。

 国営メディアへの不信感も募っているという。「ミシュスチン首相が感染したのもウソのニュースでは」と。政府がウソを発表する意味はないのではと私が言うと、「感染した国民に親近感を持ってもらうため」と分析してみせる。おっと、そうきますか。

 旧ソ連のプロパガンダ社会を生きてきた世代にとって、政府はウソつきと相場が決まっているようだ。夫妻の話を聞くとロシアの歴史の傷口を垣間見るようで、胸が痛む。

 通りにはマスクも着けない老若男女が行き交う。「コロナなんてないよ」と言わんばかり。華やぐ情景にどこか憂愁が漂うのであった。(小柳悠志)