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バンコク コロナ禍で消滅の「村」

2020年09月13日

 多数の鮮やかな黄色のコンテナが、3層に積まれて並ぶ。昨年10月、バンコクの建設現場近くで見かけた光景だ。

 通称「コンテナ村」。コンテナ内は4畳半ほどの部屋に分割され、建設作業員が暮らす。その多くはミャンマーやカンボジアからの移民労働者で、家族連れも珍しくなかった。

 6月中旬、3カ所のコンテナ村を再訪し、驚いた。

 1カ所目、100個以上あったコンテナが全て姿を消していた。労働者の子ども用に、簡易な鉄骨で組んだ学校もない。昨年、村の管理人は「改装し、新年に再び開く」と話したが、コンクリートの地面が広がるだけだ。

 別の1カ所も更地と化している。1カ所だけはコンテナが残っていたが、人影は少ない。管理人は「随分国に帰ったよ」と手持ち無沙汰な様子だった。

 新型コロナウイルスの流行後、移民労働者を取り巻く環境は厳しい。水際対策に加え、建設需要の低下で、以前のような出稼ぎが可能か見通せない。

 「三密」でもあったコンテナ村は数年後にどうなっているだろう。敷地に放置されたミャンマー語とカンボジア語を眺めながら、思った。 (北川成史)