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上海 感染拡大で法的責任

2020年09月19日

 上海市の幼稚園が6月中旬に始まった。3カ月近く自宅で過ごした娘にもようやく友達ができるかと期待したが、園に提出する「健康安全責任書」なる書類を見てのけぞった。

 家族全員について「発熱や倦怠(けんたい)感なし」「2週間内に新型コロナウイルス感染者と濃厚接触せず」などの確認項目があり、「虚偽回答で感染を広げた場合、全ての法的責任を負う」との一文に署名させられる。

 家族の中で1人でも37.0度以上の熱を出すと登園・登校ができない。市販の風邪薬は「コロナの感染を隠す恐れがある」と販売が禁じられている。もはや新型コロナに感染する不安より、厳罰付きのコロナ対策によるストレスの方が強い。小中学生の自殺が増えているとの報道もある。中国人の友人たちと議論すると「置かれている環境は皆同じ。この状況に耐えられる者だけが生き残る」「子どもの心理負担は将来の社会的なコストになる」と意見はさまざま。

 中国政府は厳しい対策を自賛して「常態化」させようとするが、果たして持続可能なのか。梅雨時を迎えた上海の街では、くしゃみの音をよく耳にするが。 (白山泉)