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仏 アジャクシオ 目隠しはもうごめん

2020年10月01日

 目隠しされた4人の男が描かれた旗に、違和感を持った。仏南東部コルシカ島最大の街アジャクシオで、隣り合うイタリア・サルデーニャ島の料理を出す店に入ったときのことだ。旗はサルデーニャ州旗に似ているが、知っているのは鉢巻き姿で目は開いている。どう違うのだろう。

 「よくぞ聞いてくれた」。店主のサルデーニャ語交じりの仏語の説明によると、目隠し姿が昔の旗で、1999年から鉢巻き姿になったという。諸説あるが、店主の話ではかつてイスラム教徒の侵略から島を守った4つの国の象徴なのだとか。

 スペインやイタリア本土の王国に支配され、翻弄(ほんろう)されてきたサルデーニャでは、独立を求める声がくすぶる。「周りに運命を委ねる目隠しじゃなく、目を開いて未来を見据える方がしっくりくる」との言葉に、悲願が透けて見えた。

 故郷に興味を示したからだろう。注文した料理を食べ終わると、自家製の焼き菓子や食後酒を振る舞ってくれた。「島の伝統なんだ」と勧めてくれた果実酒・ミルト酒は、ブルーベリーのような実の風味が凝縮されて芳醇(ほうじゅん)そのもの。島民の誇り高さが感じられた。 (竹田佳彦)