2020年10月07日
「おじさんの中国語まあまあだね」とほめてもらった。4月に刑期を終え釈放された北京の人権派弁護士、王全璋(おうぜんしょう)氏の長男(7つ)だ。大人の会話に入りたがる背伸びした様子がかわいい。
昨年9月に小学校に入った長男は学校に通えない時期があった。公安当局による学校への圧力により、入学からわずか数日で強制的に退学させられたためだ。当時、母親に「学校に行きたい」と泣いて訴えたという。
昨年末から別の学校に通えることになったが、今度は新型コロナウイルスのせいでネット授業になった。それでも表情は明るい。5年近く拘束されていた父が4月に戻ったこともあるだろう。取材の際は父の横でうれしそうにはしゃいでいた。
王氏の拘束中、妻の李文足(りぶんそく)氏は、頭髪をそるなどして解放を訴えてきた。取材のたびに涙を流していたが、当局の圧力に屈しない強い意志も感じた。現在は髪が伸び、表情がずいぶんと柔和になった印象だ。
当局が人権派弁護士らの家族に陰湿な嫌がらせをするのは珍しくない。王氏の家族はそれに負けず、ようやく穏やかな時間を取り戻した。長く続いてほしいと願う。 (中沢穣)