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米アルバカーキ 核実験の苦悩に共鳴

2020年10月10日

 広島、長崎への原爆投下前に世界初の核実験「トリニティ実験」が行われた米ニューメキシコ州のアルバカーキ博物館が、75年を迎えた実験にちなんだ、資料や創作のオンライン展覧会「トリニティ:その爆弾への思い」を開いている。広島出身で米国在住の芸術家、川野幸代さん(46)も出展者の1人。

 「リトルボーイ」「ファットマン」。広島、長崎に使われた原爆を当時の新聞紙や祖母の着物でかたどった立体作品。「トリニティ実験を考えるとき、何が誰が忘れられてきたか。一緒に問いましょう」。被爆3世として出展に込めた思いを語る。

 原爆の製造拠点となった同州のロスアラモス国立研究所で働いた物理学者の父を持つ同年代の女性との出会いをきっかけに昨年、現地でファットマンを創作、公開した。米国の核開発を担ってきた地域ゆえ、州民の誇りとともに、放射性物質の汚染などによる苦悩も肌で感じた。

 米国に移住してから、大戦中に強制収容された日系人や被爆国の「傷や痛み」に鈍感だったと思い知ったという。「そこを見つめることで、ニューメキシコの苦しみに近づけた気がする」と振り返る。 (赤川肇)