2020年10月21日
漁港へと続く路地を歩くと、どこか懐かしい感じがする。細い通りを挟んで立ち並ぶ日本式の木造住宅。韓国南東部・浦項(ポハン)市の港町、九龍浦(クリョンポ)には、日本統治時代の面影を残す街並みが保存されている。
1900年代初頭、四国の漁師たちが魚を追ってたどり着き、日韓併合後に移住が本格化した。港湾や道路を整備し、銀行や学校や神社などを建て、水産業の街として発展。一時は1000人以上の日本人が暮らしていたという。
「ここは日本人のおかげで栄えることができた。市民は恩も感じている」と案内してくれた地元の韓国人男性。終戦を機に日本人が引き揚げた後も家屋などが取り壊されなかったのは、その証しだろう。
浦項市も歴史を後世に伝えようと修復や保存に取り組んでいる。人気ドラマの撮影地にもなったことで訪れる観光客も増えたが、最近の日韓関係の冷え込みを受けて批判もあるという。
歴史を顧みれば反発する心情は理解はできるが、手を取り合った友好の歴史があったのも事実。目を背けるのではなく、素直に受け止めてもいいと思う。
(中村彰宏)