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ワシントン 戻らない日常を痛感

2020年10月19日

 ワシントンやその近郊では、止まっていた街がやっと少しずつ動きだしているところだ。だが、「コロナ前」とは雰囲気が一変し、日々は戻らないのだとかえって痛感させられる。地下鉄に乗ると、1つの車両に乗客は数えるほど。以前は大声で話す人たちで騒がしかったが、今はマスクを着けた無言の乗客が離れてぽつん、ぽつんと座っている。

 バスはというと、運転席に近い車内の前方半分がチェーンで封鎖され使用禁止に。乗客は後方入り口から乗り降りし、運転手とあいさつすら交わさない。商店でレジの店員たちは過剰なほど親しげに話し掛けてきたものだが、プラスチック板の向こうでマスクを着けた彼らは、最小限しか言葉を発せずバーコードをスキャンしている。「ハグもキスも握手もできないなんて、どうやって人とコミュニケーションをとったらいいか分からない。ストレスだ」。近くに住む白人女性は嘆く。

 赴任当初は煩わしささえ感じたさまざまな日常が今では懐かしく、変わってしまったことがさみしい。秋には、冬には、1年後には果たしてどうなっているのだろうか。

 (金杉貴雄)