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ワシントン 「怒りの記憶」が史料に

2020年11月04日

 白人警官による黒人男性暴行死事件で激しい抗議デモが行われたワシントン。最近ではデモも下火となり、ようやく日常が戻ってきた。今も当時の雰囲気を感じられるのが、抗議活動の中心となったホワイトハウス前の広場周辺のフェンスを埋め尽くしたおびただしい数のメッセージだ。

 拳を突き上げたイラストに「不正義を終わらせろ!」とのメッセージが添えてあったり、白人警官に殺害された黒人の顔写真が何十枚も張られていたり。「肌の色を理由にビクビクしながら生きていかなきゃいけないなんて!」との書き込みもある。不条理に対する人々の怒りの熱量が伝わってくる。意図したわけではないだろうが、全米で半世紀ぶりとなる大規模な抗議デモに関する史料の即席の展示場になっていた。

 ただ日常が戻るにつれ、メッセージは撤去され始めた。このまま怒りの記憶が散逸するのかと残念に思いながら周辺を散策していると、「将来の世代に伝えるべき史料として博物館が収集します」との告知を見つけ、ひと安心した。ワシントンにたくさんある博物館にまた貴重な収蔵品が増えそうだ。 (白石亘)