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中国・武漢 よぎる「現金から感染」

2020年11月01日

 「現金は受け取りたくないんだけどな」。中国湖北省武漢市でタクシーから降りる際、数枚の紙幣を差し出した。運転手は顔をしかめ、「もう今どき武漢で現金なんか使うヤツはいないよ」と言って渋々受け取った。

 中国ではスマホによる電子決済が浸透しており、現金を使う機会はかなり少ない。ただ、この運転手が嫌がったのは利便性からではなく「現金を通して新型コロナウイルスに感染することが怖いから」という理由だ。

 新型コロナが流行した初期のころ、中国メディアでは現金を媒介にした感染の可能性が指摘され、銀行が紙幣を紫外線消毒する映像が流れていた。最近では広東省のある地区で、スーパーで現金を使う際には名前や住所、身分証の番号の登録を義務付けるとの話題が報じられた。

 支払い以外にもトイレの使い方まで武漢では衛生意識が高まっていると感じた。「謎のウイルス」に感染する恐怖が頭のどこかに残っているのだろう。

 一方の上海では、コロナ禍で一度は姿を消した道に痰(たん)を吐く人が既に日常風景に溶け込んでいる。人はつらい記憶を忘れなければ前に進めないのだと許すことにしている。 (白山泉)

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