2009年07月31日
「服を脱ぎなさい」
パレスチナ自治区ガザの帰り、境界にあるイスラエルのエレツ検問所で、係官は私を別室に連行してこう告げた。さんざん所持品検査をしたのに、まだ調べたいらしい。
ひげも伸び放題で、敵対するイスラム原理主義組織ハマスっぽく見えたのか。「アイ・ラブ・ガザ」とかかれた土産のTシャツが「反イスラエル的」だと刺激したのか。
いずれにせよ、うたぐり深いこの係官を相手に、もはや逃げ道はなかろう。こう見えても、私はハマスではなく日本男児だ。潔さが問われる。そんなに見たいと言うのなら、正々堂々すべてをお見せしようじゃないか。
まずズボンを脱いだ。係官の能面のような表情に変化はない。シャツを脱いでも同じ。こんな荒っぽい検査にも慣れているとみえる。さあ、いよいよだと気合を入れ、最後の一枚に手を掛けた時、初めて反応した。
「いや、それはいい」
遠慮すんなよ。 (内田康)