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ロシア・ボゴリュボボ お茶会でほっと一息

2020年11月13日

 モスクワから電車で二時間、ボゴリュボボ村にロシア正教会の名高い聖堂がある。花咲く丘に立つ白亜の建物。足を踏み入れると、年配の女性が私たち家族を見詰めてきた。

 「せっかくだから、お茶でもいかが」と言い、私たちを隣の小屋に引っ張っていく。日本からの観光客が珍しいらしい。中ではたくさんの信者が腰掛け、テーブルにはピロシキやパンがずらり。茶をいれるためのサモワール(湯沸かし器)もある。

 信徒会による祈りの後の茶会だそうで、上座には司祭や長老の男性陣が、入り口には女性が固まって座っている。私は司祭の隣の席を勧められた。恐縮して「初めまして」とあいさつすると、司祭は「キリルです」と名乗ってにっこり。

 キリルさんは司祭になるまでの経歴を語ってくれたり、紅茶を勧めてくれたり。カップに入った濃い紅茶をサモワールのお湯で割るロシアの作法も初めて目にした。ピロシキも絶品。

 普段、無愛想に見えるロシア人も、実は親切な人が多いと改めて感じる。素朴な信仰にも触れることができた。信徒の皆さん、ごちそうさまでした。 (小柳悠志)