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米ケノーシャ 党派で異なる警戒度

2020年11月25日

 黒人男性が白人警官に背後から銃撃される事件が起きたウィスコンシン州ケノーシャの公園。人種差別への抗議集会を取材していると、「初めまして」と主催者の関係者らしい若い男性から声をかけられた。

 日本の新聞記者です、と名乗り握手のため右手を差しだそうとしたところで、はっとした。マスク姿の男性はにこやかな笑顔なまま、少し離れて動かない。そうだった、とコロナ後の「ニューノーマル」に慣れない自分が少し気恥ずかしかった。

 次に「トランプ2020」と書かれた旗が掲げられた共和党事務所前で写真を撮っていると、支持者の気さくな年配男性から中に招き入れられた。歓迎はありがたいのだが、距離が近い。そして当然のようにマスクなし。勢いにのまれ、差し出された右手を断る勇気はなかった。気のせいかしっとりとした感触。事務所を出た後、申し訳ないと思いつつ見えない場所でウエットティッシュで手を拭いた。

 米国では党派によって新型コロナへの警戒度が全く違う。ウイルスは、米国人の分断を日常の生活様式の面でも目に見える形でくっきりと映し出してしまっている。(金杉貴雄)