2009年11月29日
タイの首都バンコクで働く南部ヤラ県出身の30代の男性が、酔いも手伝ってか、悩みを話し始めた。ヤラにいる両親をバンコクに呼び寄せたいが、両親は「故郷から移住するつもりはない」と彼の申し出を断り続けているという。
母親は、電話で話すたび「今日の爆発事件は家のすぐ近くだった」などと、平然とテロ事件を話題にする。「危険だからと何度も言っているんだけど。最近は親が慣れているのも怖い」と彼。
タイは仏教国で知られるが、南部3県では人口の8割以上がイスラム教徒。2004年以降、分離独立派の武装組織がタイ軍や仏教徒へのテロを激化させ、3000人以上が死亡している。
3県にある程度の自治権を与えて治安安定化を図る案も出ているが、「それでは両教徒がさらに分離し争いが増える」と彼は言う。
仏教徒の母親は、よく言うそうだ。「5年前まではどちらも仲良くやっていたんだから」と。 (古田秀陽)