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ギリシャ・レスボス島 難民流入で憎悪に火

2020年12月01日

 燃え盛るテントやコンテナハウスから逃げ出し、路上で夜を過ごす難民ら。ギリシャ東部レスボス島最大のモリア難民キャンプで先月起きた大火災後、島の知人が送ってきた動画に心痛んだ。暮らしを少しでも改善しようと設けられた売店も、燃え落ちていた。

 1万3000人近くが暮らす施設内で新型コロナウイルスの感染判明後、隔離措置への抗議行動に火を用いたことが火災の原因とみられる。しかし1報を聞いて頭に浮かんだのは、放火だった。取材で訪れた今年3月、島ではたびたび支援施設で不審火が起きていたからだ。

 「極右支持の住民が火を付けたんだ」。非政府組織(NGO)が運営する難民らの教育施設や一時滞在施設では、住民にこう聞いた。島の港では、隣国トルコからゴムボートで到着した難民らに「帰れ。おまえらの島じゃない」と怒鳴る姿もあった。

 2015年の欧州難民危機後、戦火や政情不安を逃れてきた人々を温かく受け入れてきた島だが、流入は止まらない。難民らを分担して受け入れる欧州各国の動きは遅い。数万人の難民が暮らす島の負担感は、憎悪にも火を付けている。 (竹田佳彦)