2020年11月27日
ソウル市内のバーのマスターに「カステラ戦争を知っていますか?」と出題された。私が「洋菓子屋の競争?」と首をかしげると、彼は「ニューヨークでも昔、『カステランマレーゼ戦争』というマフィアの抗争事件があったらしい…」と冗談めかした。
正解は、韓国ビールのシェア争い。1990年代から定番となってきた「CASS(カス)」と、昨年春に発売され急成長した「TERRA(テラ)」の競争の呼称だそうだ。
カスは、薄味で炭酸が弱めの典型的な韓国ビール。キムチやニンニク味の強い韓国料理に合うとか、焼酎と混ぜる「爆弾酒」の材料に適していると中高年のファンは多い。対するテラは、じっくり熟成させるラガービールで、コクのある味わいを武器に若者らの人気を一気に得た。
ただ、カステラ戦争の陰には、昨年、日本の輸出規制強化に抗議する不買運動で販売が激減した日本ビールの存在もある。「この店でも前は、アサヒやヱビスなどを好む客が多かった。また人気は戻るのかな」。マスターの言葉が切なく響いた。 (相坂穣)