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中国・涼山イ族自治州 貧困とバイリンガル

2020年12月05日

 中国四川省の山奥にある涼山(りょうざん)イ族自治州。ある小学校の教室を訪ねると、全児童が大声で発音練習。中国の標準語「普通話」を学んでいるのかと思ったが逆。彼らは既に幼少時から普通話を学んでおり、イ族語を学び直して少数民族の文化継承に努めているのだという。

 中国で最も貧しい地域の1つである涼山は、イ族語と普通話の「バイリンガル教育」を採用している。村ではあちこちに「普通話を習得すれば仕事が楽に見つかる」「就学前に普通話を学べば世界に飛び立てる」といった看板が張り出されている。

 商店街でスーパーを営む女性は「都会に出稼ぎに行ける。普通話は絶対必要」と幼稚園に通う息子に早くから習わせていると話した。気付けば彼女の普通話は上海の人より聞き取りやすい。私を見て「初めて日本人を見た!」と喜ぶ一方、「日本は縁のない大都会だ」とも。地元以外に行ったことがあるのは四川省の省都・成都市だけだ。

 先進国との格差は大きすぎる。普通話を習得し、中国の成長の恩恵を受けることが豊かになる近道。イ族だけでなく、周辺の貧しい国家もそう考えているのかもしれない。 (白山泉)