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ソウル 月の町 増える新住民

2020年12月10日

 韓国ドラマの典型的な舞台設定に、財閥のイケメン御曹司と、貧しくもけなげに生きる女性の恋愛話がある。ヒロインは大抵、急傾斜地の上の古い借家などに暮らす。

 朝鮮戦争中、北から避難してきた住民らが、高台の荒れ地にバラックを建てて住み始めた。空に近いが、明るい太陽は届かない陰のある貧民街として、韓国語で「月の町(タルトンネ)」と呼ばれる。

 そんな地域もソウルでは近年、首都一極集中による住宅不足の解消を目的に再開発され、高層マンションに変わっていく。失われゆく風景を記憶にとどめようと、残り少ない地区の一つを訪ねた。

 車が入れない路地や階段も多く、住民の高齢化が進んでいて、買い物や通院で困っていると聞いていた。だが、実感したのは、外国人の多さ。特にアフリカや中東出身とみられる人が目立つ。イスラム教のモスク(礼拝所)や豚肉を扱わないハラル食堂が並ぶ。

 月の町で増える新住民。日本以上のペースで少子化が進み、労働力不足を補う移民が増えつつある韓国の今を垣間見た気がした。(相坂穣)