2020年12月23日
自動車の街で知られる米中西部ミシガン州デトロイトを訪れた。自動車工場で働く白人労働者に話を聞いたが、将来に明るい展望を持てない嘆きの声が印象に残った。
フォード・モーターで27年間働くフランク・ピッチャーさん(53)は「昔は自動車工場で働くのは尊敬されたよ」と振り返るが、米国内の工場は競争力が低下し、ここ20年は賃金が停滞する。「オレは中流階級の下の方だけど、いい暮らしをしてきた。でも子どもたちは自動車業界で働く必要はない」と話した。
親子二代でフォードで働くジェイソン・クルジークさん(47)も3人の子どもがいるが、「もし彼らが今工場で働いたとしても、私が働き始めた頃よりも給与は低いだろう」と嘆いた。それでも製造業はサービス業よりも給与の水準が高い雇用の受け皿で「製造業がなくなったら社会は成り立たない」と訴えた。
配車アプリで呼んだ車の運転手もたまたまフォード従業員だった。アルバイトで家計の足しにするそうで、やりくりは楽でなさそうだ。日本でも自動車は主力産業だが、国内で工場の競争力を維持できるのか、人ごとでないと感じた。 (白石亘)