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パリ カフェ 楽しめる日は

2020年12月27日

 パリ支局に赴任して1カ月がたたないうちに、新型コロナウイルスの第2波による都市封鎖(ロックダウン)に直面した。新規陽性者が5万人を超す日もあったので覚悟していたが、日本と違って感染者が多く出ている場所は公表されない。それでも、封鎖前にパリ市内を歩いていて思い当たる節があった。街の至る所で見かけるカフェだ。

 人気のテラス席は通気性こそ良いが、席が間引かれている店はごくわずかで、マスクを外した人たちが密集。「ディベートカフェ」や「哲学カフェ」などという業態もあるように、フランスのカフェでは客同士が長時間語り合うのが一般的。日が高いうちから、グラスを傾けながら大声でおしゃべりする姿をそこかしこで見かけた。「3密を避けろ」と言われ続けてきた身にはいかにも危険地帯のように映り、入店がためらわれた。

 とはいえ、カフェ文化はフランスの魅力の1つ。封鎖後も許可された通勤の途中、テラス席が撤去され電気が落ちたカフェを目にすると、「これがロックダウンか」と切なくなる。何の心配もなくカフェを楽しめる日が1日も早く来ることを願わずにはいられない。 (谷悠己)