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ベルリン 冷戦遺産に市民惜別

2021年01月12日

 ベルリン郊外に新空港が開港したことに伴い、市内にあるテーゲル空港が11月8日、70年余りの歴史に幕を下ろした。

 建設されたのは東西冷戦下の1948年。当時、ソ連が西ベルリンへの陸路を封鎖し、食料などの物資を空輸する必要に迫られたためだ。既存のテンペルホーフ空港だけでは対応しきれず、わずか3カ月の突貫工事で完成した。

 60年に民間旅客機が就航し西ドイツの飛び地となった西ベルリンと世界とをつなぐ玄関口の役割を果たした。歴史に翻弄(ほんろう)されてきたベルリンを象徴する空港だっただけに、市民は特別な思い入れがあったようだ。

 最終便はパリ行きのエールフランス機。最後のフライトを見送ろうと、空港周辺には多くの人々が集まっていた。ちょうど今年で結婚20年になるという夫婦は「テーゲルから新婚旅行に出掛けたんだ」と懐かしそうに話した。

 ベルリン中心部から約8キロと近く利便性が抜群だったテーゲル。跡地は新たな街づくりが計画されている。ベルリンに赴任した時に最初に降り立った空港がなくなってしまうのは、ちょっと寂しい。 (近藤晶)