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バンコク 若い警官の思い複雑

2021年01月17日

 道路沿いのコーヒースタンドに立ち寄った一瞬のことだった。とめた車の前輪に、若い警官がロックを掛けている。慌てて駆け寄ると、駐車違反を告げられた。署に出向き、反則金を納めなければ動かせないという。

 「急ぎの用事が…」。ひたすら懇願すると、やれやれと外してくれた。すぐ移動できるよう融通を利かせてくれたからか、反則切符は軽微な免許不携帯に書き換えられていた。「警察は小遣い稼ぎに違反をつくる」。知人によく忠告されるが、まだそんな目に遭ったことはない。

 バンコクの反体制デモの場で、最前線に若い警官をよく見かける。まれに、デモの若者と談笑し、抗議の印の「3本指」をこっそり示す姿も。ただ、職務で強制排除に出れば、硬い物などをぶつけられる。過熱すると「犬」と罵(ののし)られ、餌を目の前に置かれて挑発されることもある。ヘルメット越しにじっと耐えている表情が印象に残った。

 最近、地方からデモ警備の応援に動員された若い警官のネットのつぶやきが話題になった。「手当も支給されなかったよ」。同じ世代として、彼らにも、さまざまな思いが去来していることだろう。 (岩崎健太朗)