2021年02月01日

　１２月の夜のとばりが下りたころ、けたたましいサイレン音が自宅の外で響いた。火事？　犯罪？　音はどんどん近づいてくる。仕事の手を止め、玄関先に出てみた。

　すると、赤と青のランプを点滅させたニューヨークおなじみの消防車が、自宅前を通過した後だった。サイレン音とともに、その後ろ姿は小さくなっていき、少なくとも近所の火事ではなかったと安堵（あんど）しながら仕事に戻った。

　だが数分後、またしても近づいてくるサイレン音。再び外に出ると、さっきと同じ消防車が向かってくる途中だった。「やはり近くの火事なのか」

　そんな不安が頭をもたげた瞬間だった。消防車の荷台に乗って手を振る、真っ赤な服と白ひげの男の姿が、目に飛び込んで来た。サンタクロース。気付けば、隣の家の住人も戸口に出て笑顔で手を振り返している。「この時季の消防署のサービスだよ。春の復活祭には、風物詩のウサギの格好で回ってくれるんだ」

　消防士のみなさん、ありがとう。でも、できれば次は火事とは違う種類のサイレン音にしてください。　（杉藤貴浩）