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プーケット パラソルなしは困る

2015年02月26日

 昨年末、タイ屈指のリゾート地プーケットのビーチを訪れると、パラソルやビーチベッドがほとんどなかった。驚いた。繁忙期にはパラソルしか見えないほどいっぱいになるのに。

 軍政が昨年6月、景観を守るとして、専用業者の貸し出しを禁止にした。観光客が自分で買ったパラソルを砂浜に刺したとたん「誰から借りた?」と当局から詰問され、トラブルになりかけたこともあったという。

 そうなると、1.5キロのビーチなら100人以上はいるとされる貸出業者は路頭に迷うことになる。人気のパトンビーチで手広く事業をしていたウィットさんが昨年9月、首をつって自殺した。50歳手前という若さ。ビーチ関係者に衝撃が走った。「砂浜を愛する人にとって、頼りになる存在だったのに」と監視員の男性は悔しがる。

 釈然としない思いだったが、その後、一部だけ1月から試験的に業者の営業が可能になったとのニュース。観光客だって強い日差しを直接浴びれば、暑いはず。「人間より景観なのかねぇ」。こう嘆いていた貸出業者の60代の女性もきっと、喜んでいるに違いない。ずっと続くことを願う。 (伊東誠)