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仏マントン 難民助けた釣り人は

2021年01月30日

 「コートダジュールの宝石」「太陽と海の街」…。心躍る愛称をいくつも持つフランス南東部の観光都市マントンには、もう1つの顔がある。経済が停滞するイタリアから仕事を求めフランス入国を目指す難民たちが押し寄せる「国境の街」だ。

 海岸にいた釣り人のパトリックさん(50)も密入国を試みる難民をよく目にするという。「最近は朝から晩まで釣りをしている。日が暮れると、岩場に隠れてやってくるよ」。水やたばこをあげることもあるというので、支援団体の一員なのかと聞くと、「違うよ」と笑った。

 「では、職業は?」。平日の昼間から暇そうな人に対して失礼な質問だったかとも思ったが、照れながら教えてくれた。「実は、レストランのシェフなんだ」。フランスでは新型コロナウイルス感染対策のため、19日まで飲食店の営業は禁止中。海岸沿いに並ぶ高級レストランもすべて鍵がかかっていた。

 パトリックさんの生活も苦しいはずだが、「難民たちは自分よりも悪い境遇にいるんだ。困っている人を助けるのは当然だろう」。そう平然と言いながら糸をたれる姿は、たまらなく格好良かった。 (谷悠己)