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ワシントン ゴーストタウンの駅

2021年01月05日

 新型コロナが流行してから初めて、ワシントンの主要駅であるユニオン駅を訪れた。出張でニューヨーク行きの特急電車に乗るため利用していた頃は、足早にスーツケースを引っ張る人たちでごった返すターミナル駅だった。だが、今ではゴーストタウンのように閑散として、まるで灯が消えたように様変わりしていた。

 以前は乗車待ちの人の長い行列ができていたコンコースは人もまばら。開いている店は少なく、一等地に店を構えた携帯電話ショップやベーグル店は真っ暗。地下のフードコートは全ての座席が撤去され、お気に入りの中華料理店もつぶれていた。靴磨きの客が座る立派なソファではパーカ姿の黒人少年がスマートフォンをいじっていた。

 明かりがついた土産物店に入ると、50%オフの札がついた「米国を偉大なままに」と書かれたTシャツなどトランプグッズの売れ残りが山積みに。駅のトイレにも立ち寄ったが、通路は人とようやくすれ違えるほどの幅しかなく狭い。他人と距離が取れないので、怖くて出てきてしまった。久しぶりに訪れた駅は時代から取り残された空間のように感じられた。 (白石亘)