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英セビントン 美しい風景が台無し

2021年02月06日

 「もともとは美しい田舎の風景が広がっていたんだ。もう、台無しだけどね」。英国と欧州連合(EU)の貿易の大動脈・英仏間のドーバー海峡から西へ30キロほど。昨年末に英国がEUを完全離脱する少し前、英南東部セビントンを訪れた。出会った60代の男性はため息を漏らしつつ、建設が進むトラック約1200台分の巨大駐車場に視線を送った。

 英EUは完全離脱後も関税ゼロの自由貿易を続けるが、物品の通関手続きが復活した。英政府は海峡近くで通関待ちトラックが渋滞して物流が滞ることを懸念。離れた場所に待機用駐車場を整備した。セビントンの用地はもともと農地で、男性は緑が失われたことに落胆した。

 セビントンがあるケント州は農地、果樹園の多さや豊かな自然から「英国の庭」と呼ばれる。ただ、近ごろは「『英国のトイレ』に変わる」との不安も。政府は物流停滞を避けるため、州内の幹線道路脇にトラックを待機させる対策も用意。その場合、乗員用の簡易トイレを並べるからだ。取材した駐車場周辺の丘陵地を目にその光景を想像した。ちょっと、やるせない気持ちになった。 (藤沢有哉)