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ロシア・サバティエボ 息吹き返した毛皮村

2021年02月14日

 ロシア西部トベリ州サバティエボ村を訪れた。旧ソ連政府が1960年代、毛皮産業のためにつくった村。住民は600人でイタチ科のミンクやキツネ10万匹以上を飼育している。

 村は「ザ・ソ連」といった感じのたたずまい。無機質な風合いの集合住宅が並び、学校や小さな食料品店も。住民の仕事や暮らしは村内で完結する。

 「ソ連時代、こうした毛皮村は500以上あったんです」と飼育農場の社長。ソ連崩壊後の混乱で毛皮産業は壊滅的な打撃を受け、今では30余りしか残っていないとか。

 サバティエボもソ連崩壊後に苦しい時代が続いた。それでも飼育規模を増やし農場の自動化を進め、国外に取引先を広げて乗り切った。農場のホームページは英語版や中国語版もある。

 苦労は報われたようだ。欧州では毛皮製品に抗議する動物愛護団体の影響もあって、飼育農場が減っている。おかげでサバティエボの毛皮は最近、市場で高値がつくようになった。

 毛皮商品の是非については議論があるが、廃村を免れたのは住民の辛抱があったからこそ。村の未来に幸あれ。

 (小柳悠志)