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中国・陽泉 お寒いEVタクシー

2021年02月16日

 最新型の電気自動車(EV)タクシーの車内で、2時間以上も寒さに震える経験をした。

 中国内陸部の山西省陽泉(ようせん)を取材で訪れた。仕事を終え、最寄りの高速鉄道の駅に行こうとタクシーを呼ぶと、運転手の男性が「最近、陽泉のタクシーは全部EVになった。電気が足りなくなるから、エアコンは使えない」と告げた。

 聞けば、駅まで100数10キロの山道で、充電量が100%でもエアコンを使う余裕はないという。他に手段はなく、気温5度の中を震えながら駅まで向かった。

 山西省は炭鉱が多く、中国でも大気汚染が深刻な地域だ。運転手によると、環境問題を重く見た地元政府が、タクシーをすべてEVに切り替えるよう指示したという。

 「陽泉は山道が多く、電気がすぐなくなる。お客さんのクレームも多い。政府の指示だから仕方がないけど、困ったもんだよ」と運転手。EVの弱点は走行距離の短さだ。都市部はいいが、郊外の山道には向いていない。最近中国では環境意識が高まっているが、対策をPRしたい地元政府の「勇み足」のような気もした。 (坪井千隼)