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ロンドン 医療従事者心の危機

2021年02月21日

 「医療従事者は国の財産。私たちには彼らへの恩義があるし、支えなければならない」

 新型コロナウイルスの変異種が流行する英国では、医師や看護師らの心のケアが大きな課題になっている。ロンドンにある大学の教授は1月中旬、ツイッターへの投稿で対策を講じる必要性を訴えた。

 教授らは昨年夏、集中治療室(ICU)で働く医療従事者700人余の心の状態を調べた。今月中旬に発表された結果によると、ほぼ半数が精神的な健康を損なっていると訴え、不安障害やうつ病などの症状を報告した。回答者の1割強は自殺や自傷行為を考えた経験があった。

 英メディアも彼らの過酷な状況を伝える。大勢の感染者の治療による疲労と患者を救えなかったときに抱く罪悪感のような気持ち。自分も感染し家族にも広がるのではないかという恐怖感も心がすり減る要因だ。

 日本の報道で時々、医療従事者への差別に関する記事を目にする。英国とはコロナ禍の規模が違うが、医師らが不安や恐怖を抱えつつもウイルスとの闘いの最前線に立つ状況は同じはず。国を問わず、彼らへの感謝と支援は大切だ。 (藤沢有哉)