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ワシントン 議事堂に残る鉄条網

2021年03月14日

 ワシントンの連邦議会議事堂は今なお、高さ2メートル以上のフェンスに周囲を囲まれ、容易に近づけない。フェンス上部の鉄条網は進入を一層難しくする。

 1月6日、大統領選で負けたトランプ前大統領にあおられた白人至上主義者らがバイデン大統領の就任を阻止しようと議事堂を襲撃した。20日のバイデン氏就任式を前に首都は厳戒態勢が敷かれた。市中心部は人が徹底的に締め出され、支局に行くのも一苦労。警官から「記者証だけでなく、支局の住所が分かるものを見せろ」と言われるほどで、鉄条網はその名残だ。

 議事堂の西側からフェンス沿いを少し北に歩くと、第二次大戦中に米国民でありながら敵性外国人として、鉄条網が張り巡らされた収容所入りを強制された日系人約12万人の歴史を伝える記念公園がある。園内には有刺鉄線で縛られて身動きが取れない2羽の鶴のブロンズ像が立ち、自由を奪われた日系人の苦しみを今に伝えている。

 鉄条網はそれほど負のイメージが強い。議会を襲った暴徒のせいで今、米国民全体が言論の府から遠ざけられている。コイル状の鉄線が首都の寒空を一層冷たくしている。 (岩田仲弘)