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ニューヨーク 懐かしの味の理由

2021年03月19日

 新型コロナウイルス対策で禁止されていた飲食店の屋内営業が再開したニューヨーク。久しぶりの外食は少し珍しいものがいいと、以前から気になっていた近所のペルー料理店に行ってみた。

 注文したのは、「ロモ・サルタード」という牛肉の炒めもの。他の具材は厚切りのタマネギとピーマン、パプリカ、フライドポテトなどかなりの存在感だが、すぐにおいしく平らげてしまった。その理由は、どこか懐かしさを誘う味付け。明らかに、しょうゆを使っているのだ。

 会計に来た女性店主に尋ねると「そうですよ、しょうゆです」と即答。「まさか、僕が日本人だから使ってくれたとか」との問いには、「いいえ、この料理は元々しょうゆを使うんです。ペルーに来たたくさんの日系移民の影響でしょうね」と笑顔で教えてくれた。

 日本からおよそ1万5000キロ、ニューヨークまでは6000キロのペルー。長い距離と時間を隔てて、こんな一皿に出合えるのも、人々の自由な移動が積み重なってこそ。「コロナ、早く終わるといいですね」。実感を込めてあいさつし、店を出た。

 (杉藤貴浩)