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ニューヨーク コロナ禍で様変わり

2021年03月24日

 新型コロナウイルス感染症の拡大後初めて、ニューヨークを訪れた。ほぼ1年ぶりに立ち寄ったが、コロナ前は活気に満ちていた街が様変わりしていた。

 平日の昼に目抜き通りを歩いても、スーツ姿の人は見かけず、土産物店は閉まっている。多くの企業は在宅勤務だし、観光客もいないから当然だが、やはり驚いた。なじみの居酒屋も無残につぶれ、ショックだった。

 ちょうど地下鉄では暴行事件が相次いでいた。恐る恐る駅に行くと、ライフルを手にした兵士や警官が警戒している。物騒な光景なのだが、警備が厳重なのはむしろ安全に感じられた。

 地下鉄車内はやはり乗客が少ない。マスク越しに何げなく友人に話しかけると、近くの乗客から視線が飛んできて、飛沫(ひまつ)を嫌う無言の圧力をピリピリ感じる。以前は混雑した車内でおしゃべりをする人が多かったが、隣の親子連れも目を閉じて静かにしているのを見て反省した。

 暗い雰囲気が漂う街だが、夜になってマンハッタン島の対岸から街を眺めると、光り輝く高層ビル群の美しさは変わらなかった。コロナ禍の長いトンネルの先に、光が見えることを願った。 (白石亘)