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バンコク デモ制圧誰の味方か

2021年04月05日

 「すみません、行かないで」。振り向くと、数人の若い女性が手招きしていた。街中ではない、バンコク近郊の警察署。タイの反体制デモで、扇動容疑の聴取に出頭した学生の取材を終え、立ち去るところだった。

 声の主は、その友人たち。現地メディアが撤収してしまい「違法に拘束されないか心配だ。弁護士を呼ぶので、それまで監視役としてとどまってほしい」という。幸い、大学生は放免となり、ホッとした様子だった。

 デモが激しくなるにつれ、当局への不信も高まっている。警官がデモ隊に紛れ、爆発物などを投げて混乱させる、といった噂(うわさ)も絶えない。それでも、衝突を極力避け、デモ参加者の安全に気を配る姿を目にすることもあり、ホッとする。隣国に目を向けると、なおさらに。

 クーデターで国軍が政権を奪ったミャンマーでは、抗議する市民への銃撃や暴行が相次ぎ、カメラを向ければメディアも市民も標的となる。何の歯止めにもなりえない。市民は、本来、兵士や警官を指す「治安部隊」という言葉を使わなくなった。「警察や軍の制服姿のテロリストたち」が治安を壊しているからだという。 (岩崎健太朗)