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北京 中国社会を映す利器

2021年04月04日

 「さすが中国!」と声を上げた。一辺約7センチの立方体の機械。上部の切れ目にヒマワリの種を入れるとウィーンと小さくうなり、下部から殻と実が分離されて出てくる。よく観察すると、種をうまく挟んで強すぎず弱すぎずの力で割っている。

 その名も「電動殻むき神器」。ネット通販で見つけ、好奇心に負けて買った。99元(約1600円)。殻をむくしか能のない装置としては割高だが、ヒマワリやカボチャの種は中国で人気のおやつ。面倒な作業から解放されて実に便利だ。

 しかしこの機械について身近な中国人に話すと、「ヒマワリは殻を割りながら食べるのが楽しい」と総じて評判が悪い。実際、中国人がヒマワリの種を食べる技術は高い。種をかんで殻を割り、実だけを口に入れるという一連の動きを流れるようにこなす。確かに、ほとんどの中国人にはこの機械は必要ない。

 ではなぜ売っているのか。ネット通販の「購入者の声」を読むと、うまく殻を割れなくなった高齢者が買っているようだ。社会の高齢化で生まれた需要をうまくつかみ、すかさず商機に結び付ける。実に中国らしいと感じた。 (中沢穣)