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韓国・金浦 マッサンを目指して

2021年04月08日

 いつも飲んでいるウイスキーとは違い、色は透明に近い。口に含むと強い香りと刺激が広がった。蒸留したばかりの原酒。1年以上、熟成させるとまろやかな味わいが生まれる。

 昨年11月に取材した、ソウル近郊の金浦(キンポ)で韓国産ウイスキーづくりに取り組む蒸留所が、原酒の生産を始めたというので、見学させてもらった。前回の取材時は開業前。今回訪れると熟成用のオーク樽(たる)がずらりと並び、原料のモルトが発酵した独特のにおいも鼻を突いた。

 「酒好き」の印象が強い韓国だが、ウイスキーづくりは1990年代に途絶え、今は輸入ものしかない。蒸留所を開いた金昌洙(キムチャンス)さんはニッカウヰスキー創業者、故竹鶴政孝氏にあこがれ、ウイスキーづくりを志した。商品になるには最低でも1年は熟成させる必要があり、販売を始めるのは来春になるという。

 蒸留所の規模もまだまだ小さく、事業として軌道に乗せることは容易ではないだろうが、「いつか世界に認められるウイスキーをつくりたい」と金さん。素人の舌ではあるが、原酒は熟成前でも十分においしかった。夢の実現を期待している。

 (中村彰宏)