2021年04月20日
家族からお使いを頼まれたのだろうか。ワシントン郊外のスーパーマーケットで、メモを片手に商品を探す年配の男性がいた。よく見ると、知り合いの男性だった。普段はしないマスク姿だったので、最初は気が付かなかった。
声をかけると「俺、今笑っているんだよ。分かる?」と冗談半分に聞いてきた。目や声のトーンで十分伝わっているが、本人は気になるらしい。米国人にとって、マスクは重要なコミュニケーションを阻害する邪魔物に感じられるようだ。
米国では最近まで「マスクは(かなり重い)病気になった人が着ける」との認識が一般的だった。新型コロナウイルスという未知の疫病が話題になり始めたころ、マスク姿のアジア系の人たちが奇異の目で見られたのも無理はない。地方では、住民がマスクをドラム缶で燃やし着用義務に抗議する出来事も起きている。
男性は「ワクチンを打ち終わったら、もうマスクはしなくていい」と辟易(へきえき)した様子。「接種後も着けた方がいいですよ。完璧じゃないから」と言おうとしたが、「脱マスク」を待ち望む気持ちを思ってのみ込んだ。 (金杉貴雄)