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モスクワ 悲しみ表す赤いバラ

2021年04月28日

 「きょう、バラの花が咲きました」。エープリルフールの1日、息子が通う幼稚園で、同じ年長組のバーニャ君が言った。モスクワでバラのつぼみはまだ固いから、子どもたちは「ウソだ」と笑った。

 息子から話を聞き、同じクラスのアルメニア人サーシャ君のことが頭をよぎった。

 サーシャ君は年の割には体が大きく、性格はおっとり。昨年秋、小学校に入るため故郷に帰った。その直後、アルメニアと隣国アゼルバイジャンの間で戦闘が始まった。いわゆるナゴルノカラバフ紛争だ。

 モスクワのアルメニア大使館前は真っ赤なバラで埋め尽くされた。門には遺影が掲げられ、泣きじゃくる女性もいた。人口300万足らずの国で3000人以上の男性が死んだのだった。その多くは20歳前後。

 10年ほど後、サーシャ君が戦場に送られたら…。「ママ」と叫び、塹壕(ざんごう)で震える姿しか思い浮かばない。ゾッとした。

 「4月にバラが咲いた」。その一言で笑い合う子どもたち。でもいつか知る日が来る。バラが4月に咲く暖かい国があり、バラは時に悲しみの象徴になることを。 (小柳悠志)

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