2021年05月06日
派手なスポットライトに照らされたステージに、多彩な女性たちが登場し、ポーズを決めていく。バンコク中心部のイベントホール。華やかなミスコンテストの場に、世界各国の代表や、セレブが集まっていた。
審査の途中、音楽がやみ、現れたのはミャンマー代表のハンレイさん(22)。若者らが銃弾に倒れ、政情悪化の一途を伝える映像に続き、言葉を詰まらせ訴えた。「どうか世界の皆さん、私たちを助けてください」
文化、芸能関係者のこうした発言には否定的な意見もある。「政治に関する投稿は控えて」。事実上の一党独裁が続くカンボジアの代表は、ネットでファンにそう呼び掛け、対照的な2人の姿勢は議論を呼んだ。
ハンレイさんは家族のもとに戻れなくなった。「母国では自由に話す権利もない」。国軍の弾圧を非難する数百人の著名人が指名手配されているが「コンテストの場で、声を上げるのが使命」と考えた末だったという。突然のスピーチは「戦争と暴力の撲滅」を掲げるタイの主催団体の計らいだった。隣国の混乱にも距離を置くどこかの政府とは対照的な姿勢もまた称賛されていた。 (岩崎健太朗)