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米モントーク ウサギが張り切る日

2021年05月16日

 ニューヨーク市から車で三時間。別荘地として名高いロングアイランドの東端モントークを旅した。灯台がそびえる岬からは、大西洋に顔を出す朝日が美しいという。付近のホテルを夜明け前に出発し、灯台までハンドルを握った。

 それが、わずか十五分ほどの道のりで何度も慌ててブレーキを踏むことになった。ウサギ、ウサギ、そしてまたウサギ…。薄暗い森を貫く一本道を、目を光らせて横切っていく。米国では住宅街で見かけることも少なくないが、この日のウサギたちはとにかく活発だ。

 なんとか灯台に着くと、すでに東の空は赤く染まり、しばらくすると水平線から金色の光が見えてきた。集まった人々は感嘆の声。

 「ハッピー、イースター」。隣にいた家族から、そうあいさつされて気付いたのは、この日が春に祝われるキリスト教の復活祭だったということ。日本ではあまりなじみはないが、シンボルの一つは多産や繁栄の願いを込めたウサギだ。

 「ハッピー、イースター」。ブレーキを踏ませたウサギたちも、そう言って張り切っていたのかもしれない。 (杉藤貴浩)