2021年05月21日
ロシア南部の保養地ソチでタクシーに乗った。運転手の男性はソ連崩壊の1991年に生まれ、今年で30歳。スタブロポリ地方出身だと聞き、ピンときた。「元ソ連大統領のゴルバチョフ氏と同郷じゃないですか」。ところが男性の反応は薄い。「ゴルバチョフがスタブロポリ出身?」と首をかしげる。
一国のトップだった人物は普通、地元で語り継がれる。超大国ソ連を率いた人物だったらなおさら。でもゴルバチョフ氏に限っては、出身地でも知られていない事態があり得そうだ。
ロシアでゴルバチョフ氏の評判は散々。彼のペレストロイカ(改革)のせいでソ連が崩壊した。経済低迷が続いた-。これがロシアでゴルバチョフ氏に対する一般的な評価。「嫌い」を超えて、関心すら抱かれない人物とも言える。
男性は以前、故郷の化学工場で働いていたが、労働条件が良くならなかったという。「ソ連時代なら、もっといい暮らしができたはずなのに」。男性の恨み節は、ゴルバチョフ氏に対する当てこすりのように聞こえるのだった。
(小柳悠志)