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カイロ 慈善は真のイスラム

2021年05月28日

 ラマダン(断食月)は慈善の月でもある。カイロの主婦イットリビさん(43)は、毎年ラマダンの約1カ月間、貧しい人たちに毎日食事を提供している。イスラムの教えに従ってのことだが、1日に6、700食を配るというから驚きだ。

 イットリビさんは10人近い調理チームを雇い、自ら率先してイフタール(日没後の食事)作りに励む。新型コロナ禍で例年の集団会食が禁止されているため、1食分ずつ箱に詰めて貧困地区で配る。期間中の費用は日本円で数100万円に上る。

 こうした活動ができるのは、イットリビさんが裕福だからにほかならない。しかし、お金だけ払って誰かに依頼するのではなく、自ら携わる姿に感激した。それを伝えると、全身を覆う黒いニカブから目だけのぞかせ、「貧しい人を助ける。これが真のイスラムなの」と笑った。

 取材を終え、女性だけでイフタールを楽しんだ。女性同士のときはニカブは脱いで構わない。ニカブの下のイットリビさんは、染めた金髪をポニーテールに束ね、ジーパンにTシャツ姿。あっけにとられる私に「驚いた? これがイスラムなの」と豪快に笑った。 (蜘手美鶴)