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バンコク お直しで底堅さ実感

2021年06月07日

 出勤途中、駅のトイレで勢いよくファスナーを上げると、「ビリッ」と不穏な音とともに当該部分が開閉不能に。電車内でも困ったが、それ以上に、速乾性に優れ10年も愛用していたズボンだけに別れがたさが募った。思い出したのが、いつも見かけるおばちゃんの顔だった。

 バンコク中心部の歩道脇。日よけのパラソルに、裁ちばさみや針山が置かれた作業台ひとつの手芸スタンドを出す女性(55)。「普通のファスナーなら30バーツ(約100円)、日本製なら60バーツだね」。なんという破格値か。東北部の村から移り、オフィス街近くで注文を受けて15年以上。丈詰めにかけはぎ、寸法直しなど「生地が厚くても、たいがいはできるよ」と、年季の入った相棒の足踏みミシンに目をやった。

 10年ほど前は、一日3000バーツ以上の稼ぎがあったそう。その頃より客は減り、この新型コロナウイルス禍。オフィス街ではシャッターを下ろす店も目立つが、「景気がよくないときほど、皆ものを大切にするのか、今はボチボチだね」。生き返らせてもらったファスナーの使い心地を確かめながら、この国の底堅さを感じた。 (岩崎健太朗)

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