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北京 あのカメは売れたか

2021年06月25日

 北京では初夏になると、道端でカメを売っている人を見かける。体長20~30センチほどのカメの甲羅をロープでしばり、棒にぶら下げるのが定番のスタイル。カメはたいてい1匹だけで、空中でもぞもぞと脚を動かしている。弱らないのか心配になるが、傍らの男性は悠然とたばこを吹かしている。

 通勤経路にもカメ売りの男性が現れた。どこで捕ったのか聞いてみると、「家の近くだ。これは中華亀。600元(約1万円)だよ」と胸を張る。強気の値段設定だが、「中華亀」とはそんなに珍しいのか。さっそく調べてみると、日本でも一般的なクサガメの一種らしい。

 翌日から通勤途中に男性に声をかけられる日が続いた。「買わないか」。申し訳ないが、そのつもりはない。毎日そそくさと足を速めたが、いつの間にかカメと男性を見なくなった。

 あのカメは売れたのかと考えていたある日、北京市内の別の場所で男性とカメにたまたま遭遇した。目ざとく私に気付いた男性はすかさず「安くするよ」。首を振って立ち去ったが、あのカメは以前のカメと同じなのか。カメの健康と男性の商売が気になる。 (中沢穣)