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ソウル 恋しい韓国のど自慢

2021年06月22日

 ソウルでカラオケ店に行くと、しばしばプロ顔負けの歌唱力の一般人に出会う。コブシの回った演歌などは圧巻だ。歌好きの韓国の国民性の象徴が「KBS全国のど自慢」。日曜昼に放送され、NHKのど自慢によく似ているが、鐘の音ではなく「ピンポンパン」と百貨店の案内放送のような効果音が鳴らされたり、観客席の最前列で派手に踊る応援団がいたり、微妙な違いが面白い。

 番組の顔は、30年以上、司会を務める宋海(ソンへ)さん。94歳の高齢ながら、張りのある声で、出演者と触れ合ってきたが、新型コロナウイルス禍で、観客を入れた収録ができなくなって1年になる。先日、代わりに人生初のオンライン公演に出た宋さんの話は、やはり胸に響いた。

 宋さんの故郷は、北朝鮮側となった黄海道(ファンヘド)。朝鮮戦争中、南に逃れて家族と離散した「失郷民」の体験を歌で表現し、「コロナ禍、北の親戚はどうしているかな」としみじみ。「私はまだ若いので知らないが、(重大な感染症は)100年に1度起こる」と笑わせ、「克服方法は見つかる。防疫で勝とう」と力を込めた。早くまた、公開収録での名司会を見たい。 (相坂穣)