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米バージニア チップに込めた自由

2021年06月30日

 米国ではタクシーよりも、ウーバーなど「ライドシェア」が一般的だ。スマートフォンで行き先を入力すると、ウーバーに登録している近くの運転手が車で駆けつけてくれる。先日、バージニア州からワシントンに戻る際も利用した。

 運転手の男性(62)は、アフガニスタンから40年ほど前に渡米してきたという。「ロシア(当時は旧ソ連)が侵攻してきたから、逃げて来たんだ」。2001年には米中枢同時テロをきっかけに、米軍がアフガニスタン国内の武装勢力に攻撃を開始。「当時は周りの目が怖くて出身地なんて言えなかった」と振り返り、「アフガニスタンの歴史は戦い、戦い、戦いだ」と嘆いた。

 自由の国・米国での暮らしも長くなったが、今も「お客さんが払う料金からウーバーが取っていく割合が年々上がっていて、ウーバーに抑圧されているよ」。

 途中で何度も道を間違えた男性。でも、チップはできるだけ弾んだ。チップは、ウーバーには手を出せない、真の「自由」の領域だ。「ありがとう、助かるよ」という男性のうれしそうな声が印象に残る。 (吉田通夫)