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中国・延安 「抗日」強調には違和感

2021年07月02日

 「日本人は気分を害されるかもしれません」。陝西省延安(えんあん)の中国共産党史跡を巡る取材ツアーに参加した。その一環として革命をテーマにした演劇「延安延安」を鑑賞した際、ツアー担当者から事前に注意を受けた。

 延安は、共産党が1937年から10年間拠点を置いた「革命聖地」だ。共産党は国民党から追われ、「長征」と呼ばれる1万2500キロの難行軍の末、延安を拠点に捲土重来(けんどちょうらい)を図った。

 演劇は長征の苦難や共産党の延安時代を中心に描いていた。毛沢東ら党幹部は登場せず、名も無き兵士の物語を軸に展開。観客席を巻き込んだ演出もあり、作品としては面白く感じた。

 だが敵役はもっぱら、あくどい日本兵。事前注意を受けただけあって過激な場面も多い。一方で共産党を追い込んだはずの国民党はほとんど登場しない。

 7月に共産党創設100年を迎える中国では、革命聖地巡りを推奨し、延安延安も多くの人が鑑賞する。中国では「抗日(反日)ドラマ」は一般的な存在だが、最近は以前に比べ、過激な内容はかなり減った。それだけに、「抗日」を強調した演劇には違和感を覚えた。 (坪井千隼)